カツベン!(2019)
周防正行監督が魅せる古き良き映画の世界
映画への愛とこだわりがつまった娯楽作
『Shall weダンス?』『それでもボクはやってない』など、コメディタッチのエンターテイメント作からシリアスな社会派まで、純粋に笑ったり、深く考えたりと、観る者の心に残る作品を手掛けてきた周防正行監督が、“映画”をテーマにした映画を製作しました。
相当に思い入れのある作品だったのでしょう。本作の公開前のプロモーションでは、「周防正行の日本全国しゃべくり道中」と謳った大プロモーションを敢行。周防監督みずから映画『カツベン!』と“活動弁士”の魅力を伝えるために、47都道府県を縦断してイベントや取材を行いました。
「カツベン」とは、映画がまだサイレントで活動写真と呼ばれていた大正時代に、映画の面白さを伝えた“活動弁士”のこと。映画をこよなく愛する人々によって作られた、映画好きの心に染みる、楽しい作品です。
********
【ストーリー】
舞台はおよそ100年前、無声映画の時代。染谷俊太郎(成田凌)は、子どもの頃から活動弁士に憧れていましたが、今ではニセ弁士として泥棒一味の片棒を担ぐ日々。そんなインチキに嫌気がさした俊太郎は、泥棒一味から逃亡し、とある小さな町の映画館「青木屋」に流れ着きます。
“ついにホンモノの活動弁士になれることができる!”と喜ぶ俊太郎ですが、そこにいたのは、人使いの荒い館主夫婦、酔っぱらいの弁士や傲慢な弁士など、曲者ばかり。さらに、泥棒一味が俊太郎を追いかけてきて、てんやわんやの大騒動が巻き起こります。
********
〈カツベン〉こと活動弁士の口上からCGへと、映画の表現方法は劇的に進化しましたが、いつの時代も映画は人々を魅了してきました。
映画黎明期に、モノクロの無声映画を躍動させた映画人たちの心意気、まだまだ未熟な映画に胸を躍らせた観客たちの姿を想像すると胸が熱くなります。そして、そんな古き良き時代の温かさを、忠実に再現しようと試みた周防監督はじめ、俳優、スタッフの映画への熱い思いがスクリーンに溢れています。
映画初主演の成田凌がコミカルな演技と流ちょうな活弁を披露し、大健闘しています。個性的な弁士を演じた永瀬正敏や高良健吾、可憐なヒロイン・梅子役の黒島結菜、妖艶なモガを演じた井上真央、周防組常連の竹中直人や渡辺えり、田口浩正、ほかにも出演シーンはわずかながら山本耕史や池松壮亮など、演技巧者たちが映画を愛した人々を生き生きと演じています。
劇中で使われる無声映画はすべて周防監督によるオリジナルで、その中にも草刈民代や城田優などが出演。てらいのない、ベーシックなどたばたコメディですが、周防監督の映画への愛とこだわりがふんだんに詰まっています。
- 価格: 660 円
- 楽天で詳細を見る