アンドリューNDR114（1999） - 映画の中の人生　～50歳からの人生設計～

時代の流れや変化をしみじみと感じる
ロボットの心探しの旅を描くノスタルジックなSF映画

SFの巨星アイザック・アシモフの原作を、『ミセス・ダウト』のコンビ、クリス・コロンバス監督とロビン・ウィリアムズ主演で1999年に映画化した本作は、一般家庭に最新鋭の家事ロボットが普及している、そう遠くはない未来の物語。

人間の忠実な下部として開発されたロボットが、心優しき人々との交流の中で、自由意志と愛に目覚め、やがて自らの手で“心”を作り上げていく過程を200年にわたるゆったりとした時間軸で描いています。

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【ストーリー】
そう遠くはない未来。郊外に住むマーティン家の主人、リチャード・マーティン（サム・ニール）はNDR114型ロボット（ロビン・ウィリアムズ）を購入し、家事全般を取り仕切るメイドとして家の地下に部屋を与えます。
ロボットは“アンドロイド”を聞き間違えたマーティンの７歳になる次娘“リトル・ミス”ことアマンダ（ハリー・ケイト・アイゼンバーグ）によって、“アンドリュー”と名付けられます。単なる家事ロボットだと思われたアンドリューですが、音楽に耳を傾けたり、本を読んだりと人間並みの感性を表します。さらにリトル・ミスの大切なガラス細工の馬の人形を壊してしまった償いに、流木を使って見事な木彫りの馬の人形を作り上げたことで、リチャードはアンドリューがただの機械ではなく、創造性と個性を持った存在だと確信します。
それ以降、マーティン家の人々はアンドリューを人間同様に扱い、特に成人したリトル・ミスは恋愛の対象として見つめるようになります。
しかし、ロボットのアンドリューに気持ちを伝えることができるはずもなく、アンドリューもそれが愛だとは知らずに不思議な感覚に囚われながら、リトル・ミスの結婚パーティに出席します。そして、もっと人間に近づきたいと願ったアンドリューはある決心をします。

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CGで作り出せないもの、いや決して作り出してはいけないもの。それは心です。だから、心探しの旅をするロボットにマン・イン・ザ・スーツ式のアプローチは当然の選択でした。

『ミセス～』では、見事な家政婦のおばさんに変身したロビンでしたが、本作ではさらに進化したコスチュームプレイを見せ、全身を約16キロの黄金色のロボティック・スーツに包み、ロボット役に挑んでいます。

ロボットから200年分の歳を重ねた老人まで、ロビンが映画全編でアンドリューを演じているものの、その素顔が映るのはフィルムの2/3にすぎません。にもかかわらずフィルムに求められたのは、ロボットから人間へとアップグレード（進化）する過程で見せるアンドリューの感情であり、それはすなわち個性豊かなロビンの演技力に委ねられました。

そして、人形師のクリス・ネルソンが、ロボティックスーツの中に入ったロビンの感性を彷彿させる豊かな顔の表情と16キロものスーツから生み出されるしなやかな身のこなしをコントロールして、正真正銘ロボットが主役を務める人間ドラマが誕生しました。

クライマックスの老いたアンドリューのメイクアップは『ミセス・ダウト』に続いて、グレッグ・キャノムが手掛けており、200歳という人間の限界を越えた皮膚や、しわを作り出しています。

また、アンドリューの心の変化とともに発展してゆく近未来的なサンフランシスコの街並みは、『スター・ウォーズ』シリーズの美術を手掛けたノーマン・レイノルズによるもので、『マトリックス』を手掛けたマネックス・スタジオでセットが建設されました。

と、数々の特殊技術が話題の作品でしたが、映画公開から20年が経ち、当時は画期的だった映像世界も今見るとチープに見えますし、AIの目覚ましい発展で“心”を持つロボットも非現実的ではなくなりました。そして、ファミリー向けのコメディから感動的なヒューマンドラマまで、記憶に残る名作を数々生み出したロビン・ウィリアムズももういません――。時代の変化が本当に切なくなってしまいます……。

観た時代や、その時の自分の状況で、感じ方が違うということも、映画が人々に愛される理由ではないかと思います。

本作を今見ると、ロボットスーツに身を包んだロビンの心意気と、ロボットの心の旅という未知の世界を探ろうとした製作者たちの思いに胸が熱くなります。

クリス・コロンバス監督はロボットが人間に生まれ変わる過程をテクノロジー面と精神面からじっくりと描いています。

時の流れに身を委ねながら味わいたい映画です。