実在の人気脚本家チャーリー・カウフマンが
四苦八苦しながら書き上げた脚本は超一級の奇抜さ
原作は女性ライター、スーザン・オーリアンが珍種の幽霊蘭の採取に情熱を燃やす蘭コレクター、ラロシュに密着したノンフィクションです。
しかし、本作で描かれるのは『マルコヴィッチの穴』(’99年)で評価を高めた実在の人気脚本家チャーリー・カウフマンがその映画脚本の執筆に四苦八苦する姿です。
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【ストーリー】
デビュー作『マルコ~』で評価されたものの、内向的なチャーリー(ニコラス・ケイジ)の人生はうまくいきません。ガールフレンドには告白できず、『蘭に~』の脚本執筆にも行き詰まり、「なぜ自分はこの世に生まれてきたのか」とまで思い悩んでしまいます。
そんな彼をさら追い込むのが同居中の双子の弟ドナルド。楽天的なドナルドがセオリーどおりに初めて書いたくだらない脚本がハリウッドで認められたのです。
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『マルコ~』以降、常に奇抜なストーリーテリングを求められるカウフマンがその立場を自虐的に捉えたシュールなユーモアが冴えています。
物事をシリアスに捉えるマジメ人間が苦しみ、甘い考えの世渡り上手が成功するという理不尽な現代社会をとことん反映した双子の描き方に苦笑するやら感心するやら。悲壮な面持ちのチャーリー、能天気なドナルドという対照的な双子をひとり二役で演じるニコラス・ケイジも絶妙です。
チャーリーの創作作業の中でラロシュを取材するスーザンの物語が進行し、原作にも言及していますが、クライマックスには違う時間軸にいた4人のキャラクターがなんと対面してしまいます!
現実と虚構が交錯する展開が奇抜に映りますが、人間の根源的な命題に迫ると見せかけて、実はハリウッドの大作映画への痛烈な皮肉が込められた脚本は超一級です!