映画の中の人生 ~50歳からの人生設計~

人生に迷えるアラフィフ女性が、映画を通して人生について考える。ネタバレなしの映画レビューサイト。

スパイダーマン2(2004)

ふがいなさが愛しいヒーロー、スパイダーマンが活躍する
荒唐無稽なアメコミ映画を楽しもう!

内向的な高校生ピーター・パーカーが特殊能力を身につけ、スーパーヒーローとして活躍する――。

サム・ライミ監督による『スパイダーマンは、オープニング3日間で興行収入1億ドル突破という全米での圧倒的な支持を受けて、すぐさま第3作までの映画化が決定しました。本作は待望のシリーズ2作目です。

前作で描かれたのはピーターが何の因果か巡ってきた自分の運命を受け入れるまで。若者なら一度は犯してしまう奢りから出た過ちを償うために、悪の成敗に精を出す律儀なヒーロー像を、若手演技派トビー・マグワイアがその評価に恥じぬ演技で確立しました。

そんなトビーの健闘が光る一方で、B級アクションの鬼才サム・ライミ監督のファンにとって、前作はユーモアの度合いが少々足りなかったのではないでしょうか?

しかし、それは監督にとってトビーのユーモアセンスが予測不能だったからに違いありません。その問題が解消された『2』では、サム・ライミらしいとぼけたユーモアが満載され、アメコミ的な荒唐無稽さが際立っています。

****

【ストーリー】
グリーン・ゴブリンとの死闘から2年。大学生になったピーター(トビー・マグワイア)は相変わらずスパイダーマンとして活躍するものの、私生活はボロボロ。独り暮らしを始め、アルバイトを掛け持ちして学費と生活費を稼いでいますが、何事も事件が起これば後回し。そのため、成績は下がるし、ピザ屋のバイトは度重なる遅刻でクビ、MJ(キルスティン・ダンスト)を愛する気持ちも彼女の身の安全を守るため押し殺すしかありません。
そんなある日、ピーターは友人ハリー(ジェームズ・フランコ)の紹介で、尊敬する科学者オットー・オクタビアス(アルフレッド・モリーナ)と出会います。

****

新聞社の鬼編集長ジェイムソン(J・K・シモンズ)にキャメラマンとして強引に連れて行かれたチャリティー・パーティで、ピーターはMJがジェイムソンの息子ジョン(ダニエル・ギリース)と婚約したことを知ります。なんともドラマチックな状況なのに、ライミ監督はお人よしで情けないピーターのあぶり出しに徹底します。この妙なこだわりがじわじわと笑いのツボを刺激します。

周囲の人々にとってピーターはふがいなく映るに違いありませんが、彼の事情を知る映画を観ている人たちは彼を愛さずにはいられなくなります

今回の敵は、背中に金属性人工知能アームを結合したドック・オク。タコ男とクモ男が宙を縦横無尽に駆け巡るアクションシーンは目にも楽しく、スピード感に溢れ、爽快な気分になります。

メイおばさんを演じる77歳のベテラン女優ローズマリー・ハリスも巻き込んだ高層ビルでのバトル、走行中の列車での死闘など、「そんなまさか!」な展開にも細部に妙なこだわりの小ネタが仕掛けられ、荒唐無稽なアメコミ映画、そして悩めるヒーローの活躍を素直に楽しみたいという気分にさせられます!


スパイダーマン2 4K ULTRA HD & ブルーレイセット [4K ULTRA HD + Blu-ray]


スパイダーマン2 (吹替版)

サヨナライツカ(2010)

パリでの結婚生活を経て、女優業を再開した
中山美穂が燃えるような愛の物語に挑む

1975年のタイ・バンコク運命的な出会いを果たした男女の25年に渡る愛を描く壮大なラブストーリー。

2002年に作家・辻仁成と結婚後、パリへ渡り、一児の母となった中山美穂8年ぶりに女優復帰を果たして注目された作品です。夫・辻仁成の原作だったことも、大きな話題となりました。

自由奔放で魅惑的なヒロイン・沓子に扮した中山美穂大胆なラブシーンに挑戦するなど、新境地を見せています。

****

【ストーリー】
29歳のエリートビジネスマン・豊(西島秀俊)は日本に婚約者の光子(石田ゆり子)を残し、バンコクに赴任します。そこで魅惑的な沓子(中山美穂)に出会った豊は、沓子の誘いに応じ、2人は欲望のままに愛の日々を重ねていきます。
しかし、出世のために光子と婚約した豊は、愛か出世かで迷うことになります。

****

家庭生活を優先し、女優業を休業していた中山美穂。洗練されたパリの街で愛する家族と暮らすナチュラルな生き方を選んだことが中山美穂という女優の存在をより進化させたように思いました。

仕事にも家庭にも恵まれた彼女を、公開当時、同世代の私は心底うらやましく思っていました。でも、人生は分からないものですね。。。

バンコクの高級ホテルのスイートルームで暮らし、エレガントなドレスを着こなす美しい沓子は、妖艶な魅力を振りまき、男たちの目をくぎ付けにします。あまりにも完璧過ぎて、この世には存在し得ない幻のような沓子に、中山美穂は軽やかに息を吹き込みました。

男性は沓子のような女性に愛されてみたい、女性は沓子のような美しい女性になってみたい……、きっとそう思うのではないでしょうか。そんな思いに囚われるほど、幻想的な愛の物語へと引き込まれました。

監督は韓国映画私の頭の中の消しゴム』のイ・ジェハン西島秀俊は20代と50代の豊を演じ分けるために13キロ増量した後、1ヵ月で15キロ減量するという過酷な役作りを行ったそうです。

豊を翻弄する沓子と、豊を思い続ける光子。豊はどちらの愛に応えるのでしょうか。現実離れした不思議な空気感の中で、「愛と人生」の関係について徹底的に突き詰めた原作のテーマをしっかりと伝え、美しくも切ないラブストーリーを完成させたイ・ジェハン監督の才能も光ります。

25年後に明かされる三角関係の結末。「サヨナライツカ」という言葉の意味が心に深く染みます。


サヨナライツカ【Blu-ray】 [ 中山美穂 ]


サヨナライツカ (幻冬舎文庫) [ 辻 仁成 ]

スパイダーマン(2002)

カルト映画でならしたサム・ライミ節がうなる
悩めるヒーロー、スパイダーマンに共感

「観客が観たいものなんて分からない。自分が観たいものを作るだけさ」とは、あるハリウッド映画のヒットメーカー製作者の言葉です。

マーベル・コミックスより刊行されてから実に40年を経た2002年、ようやく実写版での映画化にこぎ着けた『スパイダーマン』でも、「『スパイダーマン』は僕のヒーロー」と言うサム・ライミ監督が密かに冒頭の言葉を語っているような気がします。

コミックのコマが矢継ぎ早に登場するオープニングロールは長年待ち望んだコミックファンへのシャレたサービスかと思いきや、私は本編が始まっても、まるで原作のコミックブックを読んでいるような錯覚に陥ってしまいました。

クモの巣が描かれた、ぴったりスーツに身を包み、クモの糸を使って摩天楼を飛び回るアメコミヒーロー、スパイダーマンちょっぴり“ダサめ”な高校生がスーパーヒーローになる物語は全世界で空前の大ヒットを記録しました。

****

【ストーリー】
両親を幼くして亡くしたピーター・パーカー(トビー・マグワイア)は、優しい伯父夫婦とともにニューヨーク郊外のクイーンズで暮らすごく平凡な高校3年生。勉強は得意でも目立たないピーターはクラスメートの男の子からはからかわれ、思いを寄せる幼なじみのメリージェーン(キルスティン・ダンスト)にはその存在すら気付いてもらえません。
そんなある日、課外授業で遺伝子を組み替えたスーパースパイダーに刺されてしまったピーターの身体に異変が起こります。動体視力や跳躍力が驚異的にアップし、手のひらから毛羽だった触毛が生え、手首から白い糸が飛び出すという、まるでクモのような特殊パワーを手に入れたピーターは賞金目当てで賭けレスリングに出場し、見事に屈強なレスラーを倒します。
その後、プロモーターに賞金の支払いを渋られたピーターはその腹いせにプロモーターの事務所に押し入った強盗をわざと見逃してしまいます。ところが、この強盗がピーターを迎えに来た伯父のベンを殺害したことから、ピーターは自分の特殊能力を正義のために使うことを決心します。
こうしてニューヨークの事件や事故現場に必ず現われ、人々を助けるスパイダーマンが誕生します。
しかし、世界征服を企む邪悪な怪物、グリーン・ゴブリンがこの特殊能力に目をつけ、スパイダーマンを仲間に引きずり込もうと画策するのでした。

****

製作会社が二転三転し、難航を極めた『スパイダーマン』映画化プロジェクトは、カルト映画のヒットメーカーサム・ライミ監督とソニーピクチャーズイメージワークスにより、ようやく実現されました。

スパイダーマンが愛される理由は、苦悩と葛藤を抱えたヒーローが身近な存在に感じられるからでしょう。そんな親近感を表わすべく、映画版では演技巧者のトビー・マグワイアを起用し、人物造形にこだわっています。

1作目では、スパイダーマン誕生の舞台裏で描かれる恋と正義の狭間で悩むピーターの姿がクローズアップされました。地味な印象のトビーも原作のイメージを損なわずに健闘しています。

とはいえ、“マジメ”に描くほど滑稽になるのが、コミックヒーローものの宿命です。そもそも自前でスパイダースーツを作り、脱ぎ着するヒーローです!(笑)いくらマンハッタンのビル群をリアルに飛び回ろうとも、ニューヨーカーの信望を集める大活躍をしようとも、実写になって際立つ人間臭さのために、あまりカッコいいとは言えないのがちょっと残念(;^ω^)。

ただ、映画の中に再現された、往年のアメコミ的な世界観にはうならされます。スパイダーマン誕生からグリーン・ゴブリンとの闘いでの勝利までを主要なエピソードを並べて一気に描いたストーリーには、まるでコミックブックのページを夢中でめくったような充実感があります。

映画版『スパイダーマン』は、ライミ自身が少年時代に夢中になって読みふけったコミックブックのスパイダーマンを描いたのだと思えば、多少、稚拙なスパイダーマン像も納得するしかありません。

でも、〈もしかしたらあなたの隣にいるかもしれない〉ヒーローの成長物語はまだ始まったばかりです。1作目の大ヒットを受けて、パート3までの映画化が決定し、サム・ライミ監督、トビー・マグワイアも続投しました。

ウブなヒーローはこれからどんどん成長し、作品ごとに面白くなっていきます。


スパイダーマン 4K ULTRA HD & ブルーレイセット [4K ULTRA HD + Blu-ray]


スパイダーマン (字幕版)

ファンタジア/2000(2000)

音が見える魔法の世界で開かれる
アニメーション技術の祭典

音が見える魔法の世界へようこそ!

ウォルト・ディズニー音楽を主役にしたアニメーション映画『ファンタジア』を発表したのは1940年のこと。偉大な作曲家が創造したクラシック音楽と、その音から喚起された映像のみで構成されていることから、コンサートアニメという新しい分野を確立し、世界中の人々に愛されているアニメーションです。

ウォルトの夢は毎年、新バージョンの『ファンタジア』を製作することだったそうですが、その夢はテジタルテクノロジーの成熟を待ち、約60年の時を経て、ようやく叶えられました。

2000年のプレミアムイヤーに発表された続編『ファンタジア/2000』は、新たに映像化された7曲に加え、オリジナル版からの復活作ミッキー・マウス主演『魔法使いの弟子』の8篇の物語で構成されています。

****

【収録曲】
1.交響曲第5番「運命」
2.交響詩「ローマの松」
3.ラプソディ・イン・ブルー
4.ピアノ協奏曲第2番アレグロ
5.組曲「動物の謝肉祭」より「フィナーレ」
6.交響的スケルツォ魔法使いの弟子
7.行進曲「威風堂々」
8.組曲火の鳥

****

幕開けを飾るのは、ベートーベンの『運命』。「ジャジャジャジャーン~」でおなじみの重厚な世界観が斬新なアニメーションで表現されます。

アメリカン・ポピュラー音楽の礎を築いたガーシュインの名曲『ラプソディ・イン・ブルー』では、ニューヨークを舞台に、慌ただしい日常の中にある“ささやかな幸せ”が描かれています。

ほかにも、ドナルド・ダックが主演を務め、ノアの方舟をモチーフにしたストーリー『威風堂々』、壮大なテーマが繰り広げられる『火の鳥』など、なじみ深いクラシックとともに繰り広げられるファンタジーの世界は、抽象画、CG画、手描きスケッチといった新旧のアニメーション技術の祭典でもあります。

全体的に抽象的で、哲学的な物語が多く、まさしく厳かなクラシックコンサートにいるような感じです。

製作総指揮を務めたのは、ウォルト・ディズニーの甥であるロイ・E・ディズニー。世界的指揮者ジェームズ・レイバンが主役となる名曲に命を吹き込みました。

映像の迫力を堪能することを目的に、IMAXシアターの巨大スクリーン向けに製作された作品なので、家庭用のメディア、ましてやサブスクで観ても、作品の醍醐味はあまり伝わらないかもしれません。

昨年のコロナ禍以来、ディズニーはサブスクに非常に積極的で、新作映画の中には劇場公開はせず、サブスクで配信されているものもあります。

サブスクは手軽ですが、そればかりだと寂しい気がします。せめて映画の封切りは、大きなスクリーンで観るという、“映画の伝統”は失われませんように。

本作のレビューを書くにあたって、そんな思いを強くしました。


ファンタジア ダイヤモンド・コレクション&ファンタジア2000 ブルーレイ・セット [Blu-ray]


ファンタジア/2000 [ フィルハーモニア管弦楽団 ]

ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢(2020)

魅力的な2人の女優が夢への挑戦を後押し
元気と勇気をもらえる音楽映画

厳しくも、夢のようなアメリカの音楽業界で生きる2人の女性の葛藤と成長を描くサクセスストーリーです。

****

【ストーリー】
マギー(ダコタ・ジョンソン)はハリウッド音楽業界に君臨する伝説の歌姫グレース・ディヴィス(トレイシー・エリス・ロス)の付き人をしながら、音楽プロデューサーになる夢を追っていました。
一方、グレースは過去のヒット曲ばかり歌う日々にうんざりし、現状の評価を失うリスクを負ってでも、新曲制作にチャレンジすべきか悩んでいました。
ある日、マギーはグレースのアルバムを密かにリミックスしていたことがばれてしまいます。グレースはマギーのリミックスを気に入るものの、マネージャーのジャック(アイス・キューブ)からは「プロデューサーになりたいのなら自分でクライアントを探せ」と叱責されてしまいます。
そんななか、マギーはストリートミュージシャンのデヴィッド(ケルヴィン・ハリソン・Jr)の歌声に惹かれ、プロデューサーを装い、彼をデビューさせることを思いつきます。

****

まだまだ男社会の音楽プロデューサーという仕事にひたむきに挑戦するマギーを、イギリスの人気官能恋愛小説を映画化した『フィフティ・シェイズ』シリーズで主演を務めたダコタ・ジョンソンがはつらつと演じています。

俳優ドン・ジョンソンと女優メラニー・グリフィスの娘というダコタは品の良い美しさがあり、とても魅力的で惹きつけられます。

もう1人の主人公、グレースを演じるトレイシー・エリス・ロスはなんと正真正銘の伝説の歌姫ダイアナ・ロスの娘。女優のほか、プロデューサーや脚本、監督も務める多彩なトレイシーが年齢を重ねたことから来る苦悩と葛藤を抱えるグレースを繊細に演じ、感情移入を誘うキャラクターに仕上げています。本作では初めて歌声を披露しており、吹き替えなしで挑んだステージシーンも見どころです。

日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、誠実かつ着実にキャリアを積み上げる2人の女優たちが好演しています。

監督にはゴールデングローブ賞受賞歴もある女流監督ニーシャ・ガナトラを抜擢するなど、女性のポジティブなパワーを感じさせる作品に、元気と勇気をもらえること請け合いです!


ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢【Blu-ray】 [ ダコタ・ジョンソン ]


ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢(字幕版)


ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢 (オリジナル・サウンドトラック)

トイ・ストーリー2(1999)

オモチャたちが演じる “実写”映画?!
最先端なのにアナログ的なフルCGアニメ

1995年、画期的なテクノロジーを用いて映画史に新たな1ページを開いた『トイ・ストーリー』について語るなら、世界初のフルCGアニメーションという、いかにもデジタル的な言葉よりも、どこかアナログ的な温かみのある言葉であえて呼びたいです。

それほどオモチャたちの豊かな個性とスムーズなパフォーマンスが際立つ、最高の“ヒューマンドラマ”でした。

 そんな彼ら(?)が『トイ・ストーリー2』で映画の世界に戻ってきたのは当然のことでしょう。陽気でリーダー的な存在だがお調子もののカウボーイ人形ウッディや、クールだがまじめっぷりが妙におかしい宇宙戦士アクション人形のバズを始めとする、アンディ少年の部屋に住むオモチャたちがさらに体当たりの演技(!)を見せています。

****

【ストーリー】
ウッディ(声/トム・ハンクス)は大好きなアンディ少年がカウボーイ・キャンプに連れて行ってくれるのを楽しみしていましたが、肩の糸がほつれてしまったために家に残されてしまいます。落ち込んたウッディはアンディに捨てられる悪夢を見る始末でした。
そんな中、長らく棚に置かれていたペンギン人形のウイージーがガレージセールに出されてしまいます。ウッディはウイージーを助けに行きますが、その時、オモチャマニアで量販店経営者のアルがウッディを見つけ、こっそり持って行ってしまいます。
ウッディが連れていかれた先には、かつてテレビ番組で活躍していたころの仲間たちが待っていました。そして、子どもの人気者だった頃のウッディを証明する数々のポスターやレコード、ビデオが部屋一面を埋め尽くしていました。これに気をよくしたウッディは、まさに命がけで救出にやってきたバズ(声/ティム・アレン)たちが引き止めるのもきかず、オモチャ博物館に展示され、子どもたちの永遠のヒーローとして生きる道を選ぶのですが……。

****

1作目では、オモチャをいじめる隣の悪ガキをとっちめて、華麗なるバズ救出作戦を成功させたウッディらオモチャ同士の友情が中心に描かれていましたが、今度はオモチャと人間の関係について突き詰めています。

レトロなカウボーイ人形のウッディが、実は'50年代のテレビ番組のヒーローだったことからコレクターに誘拐されてしまうという、当時ヒートアップしていたフィギュアブームや、プレミアという商業的なオモチャを取り巻く現状を絡めた展開に、我が身を振り返る大人も多いのではないでしょうか?

小さなオモチャたちから見た人間社会が完全にパロディにされていて、苦笑と爆笑の連続であると同時に、オモチャだからこそ表現できるノスタルジックな世界観はほろ苦い涙を誘います。

前作に引き続きジョン・ラセターが監督し、ピクサー社が全テクノロジーを手掛けたオモチャたちのアドベンチャーは、見事第57回ゴールデングローブ賞作品賞(ミュージカル/コメディ部門)の栄冠に輝くという快挙を成し遂げました。


トイ・ストーリー2 4K UHD [4K ULTRA HD+ブルーレイ] [Blu-ray]


トイ・ストーリー2(字幕版)


トイ・ストーリー2 (オリジナル・サウンドトラック)

アダプテーション(2002)

実在の人気脚本家チャーリー・カウフマン
四苦八苦しながら書き上げた脚本は超一級の奇抜さ

原作は女性ライター、スーザン・オーリアン珍種の幽霊蘭の採取に情熱を燃やす蘭コレクター、ラロシュに密着したノンフィクションです。

しかし、本作で描かれるのは『マルコヴィッチの穴』(’99年)で評価を高めた実在の人気脚本家チャーリー・カウフマンがその映画脚本の執筆に四苦八苦する姿です。

****

【ストーリー】
デビュー作『マルコ~』で評価されたものの、内向的なチャーリー(ニコラス・ケイジ)の人生はうまくいきません。ガールフレンドには告白できず、『蘭に~』の脚本執筆にも行き詰まり、「なぜ自分はこの世に生まれてきたのか」とまで思い悩んでしまいます。

そんな彼をさら追い込むのが同居中の双子の弟ドナルド。楽天的なドナルドがセオリーどおりに初めて書いたくだらない脚本がハリウッドで認められたのです。

****

『マルコ~』以降、常に奇抜なストーリーテリングを求められるカウフマンがその立場を自虐的に捉えたシュールなユーモアが冴えています。

物事をシリアスに捉えるマジメ人間が苦しみ、甘い考えの世渡り上手が成功するという理不尽な現代社をとことん反映した双子の描き方に苦笑するやら感心するやら。悲壮な面持ちのチャーリー、能天気なドナルドという対照的な双子をひとり二役で演じるニコラス・ケイジも絶妙です。

チャーリーの創作作業の中でラロシュを取材するスーザンの物語が進行し、原作にも言及していますが、クライマックスには違う時間軸にいた4人のキャラクターがなんと対面してしまいます!

現実と虚構が交錯する展開が奇抜に映りますが、人間の根源的な命題に迫ると見せかけて、実はハリウッドの大作映画への痛烈な皮肉が込められた脚本は超一級です!


アダプテーション [DVD]